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ハイコンセプト

■ハイコンセプト−「新しいこと」を考え出す人の時代

ダニエル・H・ピンク著
大前研一(訳)
三笠書房

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著書のダニエル・ピンク氏は日本でもなじみが深く、5年ほど前のベストセラー『フリーエージェント社会の到来』を読まれた方も多いであろう。これからのビジネスに必要な能力とは何か、を示した本書もまた、全米でベストセラーとなった。

右脳的思考が主役の時代へ

訳書のコンサルタント、大前研一氏は巻頭の解説で、かつて情報社会の到来を告げたとトフラーの「第三の波」になぞらえて、「第四の波」が寄せつつあると評している。次なる時代は「コンセプトの時代」、左脳の論理的思考に加え、右脳の創造性が社会を築いていく、としている。

インターネットの進展によって物理的距離、時間の壁が取り除かれ、欧米に代わってアジアの人々がさまざまな仕事を引き受けるようになった。「情報の時代」には右脳的(直感的)な能力は軽んじられたが、これからは右脳的な特質こそが重要になってくる。なぜなら、それらは簡単にオートメーション化もアウトソーシングもできないからである。

成功するか否かは、次の3つの問いへの答えで決まると言う。1.あなたの仕事は、他の国でならもっと低コストでやれるだろうか? 2.コンピュータならもっと速く処理できるだろうか? 3.自分が提供するものは、この豊かな時代の中でも需要があるだろうか?−。

1.と2.の答えが「イエス」、3.が「ノー」だとしたら、問題は深刻である。代替の利かない、右脳的思考を伴う仕事に取り組むことが必要なのである。

治療の成果を上げる「物語医学」

著書はクリントン政権下でゴア副大統領のスピーチライターを努めた気鋭のジャーナリストであり、大上段に構えたタイトルとは対照的に、内容には軽妙さがあり、読みやすくまとまっている。さらに、事例として、医療に関する多くのエピソードが紹介されている。

  • ・ 同じ疾患の患者さんでも手術後に日当たりの良い明るい病室で過ごすと、陰気な感じの病室にいた患者さんより鎮痛剤の投薬量が平均2割減り、2日早く退院できた
  • ・ 炭疽菌テロの際に助かった人と助からなかった人との差は、発症時、医師が親身に患者さんの話を聞いたかどうかであった
  • ・ 週に最低3時間テレビゲームをする医師は、ゲームをしない医師に比べて腹腔鏡手術でのミスが4割少なく、その処置は3割速い−など。

また近年、アメリカの医学部ではカリキュラムの改変が行われ、学生は「物語医学」を学び、「入院体験」を取り入れている大学がある。患者さんが病気について話す“物語”に重要なポイントが隠されていることが明らかになってきたからである。このように医療関係者も学び/気づきを十分に得られる内容となっている。

これから問われる「6つの感性」

本題に戻り、これから求められるのであろう右脳的な資質として、「6つの感性(センス)」が挙げられている。

  • ◆ 「機能」だけでなく「デザイン」=クルマがいい例で、外見が美しく、感性に訴えかけるものをつくることが不可欠
  • ◆ 「議論」よりは「物語」=相手を納得させる話ができる能力は何にも勝る武器となる
  • ◆ 「個別」よりも「全体の調和」=分析力だけでなく、バラバラなものをつなぎ合わせて全体像を築き上げる能力は一層重要となる
  • ◆ 「論理」だけでなく「共感」=何が人々を動かしているかを理解し、人間関係を築き、他人を思いやる能力。医師など医療関係者も患者さんの身になって話を聞けるかが問われる
  • ◆ 「まじめ」だけでなく「遊び心」=遊び心は健康面でも仕事面でも大きな恩恵をもたらす
  • ◆ 「モノ」よりも「生きがい」=働く意義を求める社員、消費者も「生きがい」へのニーズが高まっている

これらの感性については、他のビジネス理論でも必要性が唱えられているのが、本書ではそれらがわかりやすく整理されている。それぞれの磨き方についても、各章末に具体的に掲載されており、実践できそうなものから習慣として取り入れてみてはどうだろう。

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