ICUとCCU Vol.29 別冊号2005

櫻堂渉の過去の文献一覧です。DPC対応急性血液浄化法の今後の戦略−DPCの影響度と戦略的対応−

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櫻堂 渉文献

イブニングシンポジウム

DPC対応急性血液浄化法の今後の戦略
−DPCの影響度と戦略的対応−

医療経営戦略研究所所長
櫻堂 渉

特定機能病院を対象に導入されたDPC(Diag - nosis Procedure Combination)は本年4月から民間病院へと拡大し、DPCへの参加を表明している民間病院は62病院となっている。政府が従来の出来高支払い方式から包括支払い方式へ政策の意思決定を転換させたことは、きわめて大きな意味を持つ。何故なら、DPCの推進こそが、日本型ヘルスケアリフォーム(医療改革)を進めるための方法論の一つだからである。本セッションにおいて明らかにするのは、 1)日本型の医療改革の進展が、供給市場にどのような影響を与えてきたのか?その特徴は何か? 2)DPC環境下における供給側の課題の整理、 3)急性期病院のケーススタディ、4)供給側の課題と対応である。

医療改革の状況

これまで、わが国の医療改革は市場に様々な環境変化を与えている。そのうち3つの事実を確認したいと思う。まず、一般病床の患者数が激減していることが大きな特徴として挙げられる。平成8年入院患者数86万人から平成14年76万人へと患者数が約10万人減少した。そして、平均在院日数は平成9年31.4日から平成14年までで9.4日減少している。その結果、全体の病床利用率が平成11年82%から平成15年76%まで低下してきている。つまり、日本全体で考えると超過供給の状態であり、病床が余っていることを意味する。たった3つの事実から、平成10年までの変化が揺るやかなのと比較して既に改革が進行して医療市場そのものが急速に変化してきていることがわかる。

急性期病院はどのような問題に直面するか?

医療市場が変化することにより、わが国の医療水準がグローバルスタンダードに近づくことに異論を唱える者はいないであろう。(特に在院日数の短縮化に関して)確かにこれまでの平均在院日数は先進諸国のそれと比較して異例に長かった。

しかし、在院日数の短縮は市場全体に大きな影響を与えている。具体的には患者が減り多くの病院では空床が増加傾向にある。このような環境下でどのような戦略が求められるのであろうか?この環境を生き抜くために最適な医療システムをどのように構築するか?という質問に病院管理者は答えを出さなければならない。そして、近い将来一般病院に対してもDPCの選択の自由が与えられると仮定した場合、一般病院はDPCを選択するべきだろうか?このような幾つかの問題に直面することになる。

医療改革のスキーム

現在の政策変化を俯瞰すると、医療改革の戦術面が明らかになってくる。医療費の適正化が国の目標であることは明らかであるが、それをどのような仕組みで行うかという点については明確に理解されていない。現在の改革は、1)診療プロセスのコントロール、2)患者の流動化促進、3)投資と褒章のトレードオフ、という3つの戦術により市場の転換を促すことである。診療のプロセスは無駄なプロセスを削減し適切なプロセスとすることで、平均在院日数の短縮の水準に応じて診療報酬上のインセンティブを与えている。また、診療機能に応じ患者紹介を促進することにより、患者を流動化させることは、一病院完結型の医療体制のリストラクチャリングを目的としている。

しかし、医療システムの効率化を促すその一方で、質の高い医療体制を構築するには、新たな機能を付加しなければならない。例えば診療録管理の強化や安全管理などは、病院管理者に診療情報担当者や医療事故防止委員会などの新たな投資を要求することになる。したがって、投資を行って機能整備した医療機関に対しては褒章を与える仕組みがビルトインされているのである。

DPC適用病院のケース

DPCの適用によって大きな経営変化を経験した急性期病院の例を紹介し、DPC時代を生き抜くための条件について検討を加えたい。この病院は、平成11年平均在院日数が22.5日でこれを5年間で5.9日削減した。それと平行して紹介率の向上につとめ、地域医療機関との連携に積極的に取り組んだ結果、紹介率を34.7%まで上げることに成功した。しかし、在院日数の短縮による患者の減少を新規患者数で補うことができず、病床利用率は85%まで低下した。利益もそれに添うかたちで平成11年の基準値を100とすると平成14年140の伸びを示したが、平成15年20ポイント低下し、120に低下してきている。この医療機関は、病床利用率を維持するためには、紹介率を40%程度に上げてゆくことが必要となる。しかし、これはあくまでも理論値であって、病床1000床の病院が紹介率を高め続けることは地域の需給バランスから考えると不可能である。

それでは、この病院はどのような対応が必要であろうか?病床利用率が上がらないというのは、現象面のことであって問題の原因ではない。病床利用率が上がらないのは、地域需要に見合った適切な病床規模と機能となっていないからである。つまり、需要と供給のギャップが生じているためである。ここが問題の本質である。したがって、問題を解決するためには、急性期に特化するために院内の診療プロセスと機能を急性期型に修正すると同時に、病床を削減し一床あたりの診療密度を上げ、効率を高めることが重要となる。つまり、抜本的な機能再編が必要になるということである。

情報の流動化と意思決定(図1)

政府のDPCに対する基本的な考え方はすでにご存知の通りである。その中で、特に今後きわめて重要な考え方は、「病院間比較可能な標準化された情報を公開」という項目である。つまりDPCを通じて知りえた情報を政府は国民に知らせる用意があるという意味である。これは、非常に大きな意味を持つ。今後、急性期病院は診療実績を国民に示すことになり、患者はその実績を自分で判断しながら医療機関を選択するようになるのである。これは、医療における情報の非対称性を減じることとなり、国民にとってのリスクを低下させることになるであろう。情報の流動化が避けられないとなれば、必然的に起こるのは情報を制限することで、患者を囲い込むといった戦略が通用しないということを意味する。(単なる知名度は意味を成さない)したがって、経営管理者の新たなチャレンジは、診療実績を高めるために如何にアウトカムを向上させるかということに集約されるのである。政府の医療改革は、近年にないスピードをもって実行されている。市場環境が変化している時、個々の医療機関はその変化に対応するという行動をとることになり、それがある意味で健全な市場環境に転換することになるであろう。

まとめ

  1. DPC環境下において経営持続性を獲得するための条件は、診療機能の再編、プロセスコントロール、規模に関してのリストラクチャリングの発想である。
  2. 急性期病院の診療情報の流動化は評価情報として市場に広範に流布し、患者の流動化が起きる。情報の非対称性を活用した囲い込みの戦略は無力化する。
  3. DPCに向け、変化の先頭に立ち組織努力を重ねる医療機関だけが市場の勝者となる。
  4. 医療市場全体としては、解体と再編が促進する。

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