対談

異業種に学べ!世界最高のホテル リッツ・カールトン・ホテルに学ぶ真のホスピタリティとは?

透析マネジメント / 異業種に学べ!世界最高のホテル リッツ・カールトン・ホテルに学ぶ真のホスピタリティとは?

対談

3.ホスピタリティを定着させるための仕組みを用意する

櫻堂

医療機関は専門家・技術者の集団です。同じようにホテルのシェフなどもいわば技術者です。医療機関で言えば、技術者は暗に自分の技術をまっとうするのが役割であり、それ以上に顧客にサービスをすることは不要であるといったメンタリティが支配しています。このような技術者たちをホスピタリティに向かわせるコツはあるのでしょうか。それとも仕組みにビルトインされているから問題にならないでしょうか?

従業員の心の立ち位置を測る

高野

コツはないと思います。大事なことは、人を選び、地道に育てることではないでしょうか。 サンフランシスコにリッツ・カールトン・ホテルをオープンした時、採用の仕事に携わったことがあります。350人の採用枠で3千人が応募し、書類選考などで残った2千人を面接しました。生演奏が奏でられる大ホールの会場で、正装した管理職が飲物を運びながら、「ようこそ、リッツ・カールトンの面接会場へ!」と呼びかけますと、「もっと自分に合った普通のホテルで働きたい」と言って半数は帰ってしまいました。こうした演出は、実際にリッツ・カールトンのサービスを体験してもらい、我々の文化に適応したいかを考えてもらうための企画です。

さらに一次面接では、エンパワーメントと呼ばれる1日2千ドルまでの決裁権など、仕事のやりがいと責任について懇切丁寧に説明すると、さらに半分が「あまり責任のないホテルで働きたい」と言って帰ってしまいました。採用の段階で自社の理念や価値観をしっかり伝え、共有できるかどうかお互いに判断するためです。

絞り込まれた段階では、さらに面接が続けられます。例えば、「この2週間で、大事な人を喜ばせた体験がありますか?」とか、「同僚があなたに協力的でなかったらどうしますか?」といった、人間性や性格を探るような質問が中心で、経験やスキルを問う質問はありません。

これはリッツ・カールトンの採用基準が、技術や知識よりもパーソナリティを重視したものだからです。これがQSP(クオリティ・セレクション・プロセス)と呼ばれる人材採用システムで、人の心の立ち位置を測るために開発された独特なものなのです。

もちろん、たまに「どうしてこんな人を採用したのだろう」ということもありますが、大体はいたたまれずに辞めていくか、自分で変ろうと努力するか、どちらかです。つまり、“良貨が悪貨を駆逐する”というわけです。

櫻堂

医療機関が人を採用するときは、まずは資格、次に人数です。心の立ち位置とか、価値観とかいったことはほとんど問題になることはありません。粒が不揃いですから、よい試みをしようとしても、ついて来られる人とそうでない人との間に確執が起き、組織がギクシャクしていまいます。採用基準の違いは大きいですね。ここのところは非常に大きい指摘だと思います。日本人の中には人を育てるという考え方があり、それが美徳のように思われています。よく「彼は俺が育てた」と自慢する上司がいますが、それよりも重要なのが、人を選ぶということですね。

朝礼でゴールド・スタンダードを考える

櫻堂

リッツ・カールトンが採用した従業員は素質や才能があるから、あまり教育は必要ないのかもしれませんが、継続的なトレーニングはどのようにしているのでしょうか。

高野

確かに人間としての資質重視で採用しますから、入社後の研修は主にビジョンやミッション、企業哲学といった基本のみです。時間をかけるのは仕事の考え方やスタッフとしての心構えで、スキルやマナーのトレーニングは少ないほうです。

日々の忙しい業務の中で継続的に教育するのはとても難しいですから、仕組みの中で、従業員が考える時間を強制的に作っておく必要があります。リッツ・カールトンの仕組みの中で、従業員が考える時間を強制的に作っておく必要があります。リッツ・カールトンのプロセスには、その一つとして毎日のラインナップ(朝礼)が組み込まれています。

昨日の売り上げや成績を一方的に報告したり訓示したりする朝礼はどこの会社でもやっていますが、リッツ・カールトンでは、ディスカッション方式で行います。 テーマは「ゴールド・スタンダード」の中から本社が選んだ週単位で送ってきます。 昨日の課題が「こころのこもったおもてなしをする」ことだったら、このテーマでお客様からいただいたご意見や、自分が工夫したことなどを報告させ、意見交換をします。15分~20分程度の時間ですが、テーマの意味を自分の頭で考えるプロセスを、しかも毎日欠かさず行う習慣は従業員の血となり肉となります。この朝礼を毎日、全世界63店、3万6千人の従業員が繰り返しますから、連帯意識も生まれます。

櫻堂

自分で考え、声に出してディスカッションする朝礼はとてもすばらしい取り組みです。しかもそれを毎日継続するというのは、なかなかできないことです。

感謝の気持ちを表すカード「ファーストクラス・カード」

櫻堂

透析施設では、同じ患者さんが2日に1回必ず来院し、対応する職員も同じです。変化がないので職員はマンネリに陥り、セクショナリズムが台頭し、チームワークが育ちません。こうしたこう着状態を打破するには、リッツ・カールトンでされているように、手助けをしてくれた同僚に感謝の言葉を贈るカードが有効だと思いました。しかもそれが人事部に伝えられ記録される。技術者のディフェンシブな気持ちを乗り越えて、協力してもらうととてもいい仕組みだと思います。このあたりをお聞かせください。

高野

本社の人間と一緒に仕事をしていると、「サンキュー」とか「グッド・ジョブ!」という言葉が一日に何十回も飛び出します。相手をたたえる言葉も少しも惜しまないのです。これは、感謝の気持ちを素直に表現しようというリッツ・カールトンの姿勢であると同時に、頑張っている従業員を正当に評価するための仕組みでもあります。人事に報告された結果は査定の参考資料になります。

我々は「ファーストクラス・カード」と呼んでいて、現場の従業員も本当にちょっとしたことでもこのカードを出します。電話で「ありがとう」を伝えますが、形にして残すことも大事です。いつもこうしていると、相手に感謝の意を伝えることが習慣になっています。

ファーストクラス・カード

スタッフ同士がセクションを越えて手助けした時に、感謝の気持ちを記して相手に渡すカード。例えば、荷物の多いお客さんの手伝いをベルマンがハウスキーパーに頼んだ場合、荷物を運び終えると感謝の印として渡す。手渡す前にコピーされ、コピーは人事セクションに回される。人事はヘルプ内容を記録し、人事査定の資料として使われる。頑張ったスタッフは他のセクションからも尊敬され、会社からも評価されるという仕組みで、気軽に助け合える環境づくりに大きな威力を発揮している。

櫻堂

日本人は声に出して感謝の気持ちを表すのが苦手ですが、カードなら抵抗なく書けます。うまくほめると職員が前向きになり、これがまたほめる材料を生むという好循環が期待できますね。

高野

リッツ・カールトンの「ファーストクラス・カード」は、同僚への感謝を形から入らせるために作られた仕組みです。私は病院で始めるなら「ナイチンゲール・カード」を作ってみては?と、知り合いの院長に勧めています。

 


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